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2014年6月25日水曜日

福島大学で第8回公開講座が開催されました

624日、公開講座の第9回目は、
「福島県県北地域の農業経営と農業復興」について
福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの特任准教授
小松知未先生に講演をしていただきました。
食と農の再生に向けた取り組みとして「農村生活」と「農業経営」の
支援を行っている内容とこれからの課題についてについて
お話しいただきました。



講義内容ダイジェスト----------------------------------------------------

①「農村生活の再生」

伊達市霊山町小国地区での活動を紹介。
その内容は放射性物質対策から地域再生へ移りつつある。

小国地区は特定避難勧奨地点に指定された世帯がある汚染度の
比較的高い地域である。
小国地区復興プラン提案委員会は「地区全体の意見」として、
20153月に伊達市へ復興プランを提案することを目的につくられた。
委員会では、農業の問題について非農家も含めたアンケートを実施した。

小国地区は震災直後の11年には水稲の作付ができたが、
12年には作付が制限された。
13年には作付制限は解除されたものの、アンケートによると
14年の水田作付予定は震災以前の7割である。
残りの3割の農地をどう保全・利用するかが課題となっている。

アンケート結果から、水稲作付を再開している農家は自家消費と水田機能の
維持を目的としていることがわかり、一方作付を再開していない農家では、
放射能への心配と高齢化を理由としていた。
そのため、放射能汚染対策の実証試験の継続と共に、集落営農体制の構築や
生産基盤の整備など、高齢者のサポート体制を作っていく必要がある。

こういった農村での住民による農業や生活環境の向上活動の先進事例として
二本松市東和地区があり、飯舘村など避難地域でも今後このような住民の手に
よる復興に向けた取り組みが行われると考えられる。
こういった活動の成果をうまく他の地域へ波及させられるよう、
支援を続けて行きたい。

















②「農業経営の再建・産地再生」

福島市の果樹経営グループであるふくしま土壌クラブの活動を紹介。

土壌クラブの課題は、震災後の3年間で変化してきた。
当初は放射性セシウムの動態を把握することと生産物の安全性を確認する
ところから始まった。その後、検査結果の顧客への情報発信の仕方や、
販売回復傾向をどうとらえるかと行った課題に移り、
これから産地の活性化を目指している。

農産物検査や樹園地の除染がすすんだ2012年以降は、
その結果をどう情報発信をするか、が課題だった。
情報発信の2年目にはその検証をしながら、新しい取り組みとして
パンフレットとアンケートを果物に同梱して発送した。

2012年の桃に同梱したアンケートの結果、回答の傾向は福島県内と県外で
異なったため、それぞれに対応できる方法をとった。
県内果樹の売上総額は2012年で2010年の3分の2まで回復しているが、
市場価格は回復傾向にはあるが震災前には届いていない。
直接販売・直売所に関しては震災前の8~9割に回復しているが
これも相当な努力の上での数値である。

アンケートからみえるこれからの課題としては、直接販売の顧客が
相当な高齢化をしており、今後新たな顧客獲得が重要である。
そのためにも、新規顧客の獲得につながる情報発信が必要であると考えられる。
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来週は福島大学の則藤先生が講義されます。
テーマは「農産物・食品流通をめぐる課題と挑戦」です。


2014年6月19日木曜日

福島大学で第7回公開講座が開催されました

8回目の公開講座がありました。
今回は、東京海洋大学准教授の濱田武士先生
(専門:水産経済・漁業経済)に「原発事故からの漁業復興」
と題してお話しをしていただきました。

















講義ダイジェスト------------------------------------------ 

    海洋汚染について
  海水のセシウム濃度は、原発事故直後は高かったものの、大量の
 海水により、薄まったため現在は極めて低い状態が続いている。

  水産物の放射性物質検査の結果は、平成26年の45月には
 100Bq/kgを超えるものは、福島県で全体の1.9%、福島県外では
 0.4%であった。
  放射性物質汚染の影響は、海産物の種類によって異なる。
 エビ・カニ類やタコ・イカでは、原発事故の初年度からほとんどセシ
 ウムは検出されていない。また、貝類からのセシウム検出量は減少し
 現在ではほとんど検出されることはない。
  一方、カレイやヒラメ、スズキなどでは、セシウムの量は減小しつつ
 あるが、現在でも100Bq/kgを超える量が検出されるケースがある。
  魚については、エサとして何を食べているか、および大きくなるまで
 の期間・年数に関係している。つまり、魚をえさとする魚や、何年もかけ
 て大きくなる魚では、セシウムが蓄積しやすい。

    福島県漁業の試験操業
  安全性を確認しながら、漁獲、取引、加工、流通販売をしている。
  試験操業を通じて再開可能なことをアピールしつつ、徐々に拡大して
 本格的な操業再開につなげることが目的。
  漁業者の組合である漁連が中心となって、放射性物質の検査、販売
 物の管理をしている。これまで、検査により安全性を確認しながら、魚種
 や海域、漁の方法などを徐々に拡大してきた。
  20146月現在では40種類の魚介類が対象である。

  しかし、漁獲高は震災以前の1割にも満たない量である。
 それは、ただでさえ自然に左右され不安定な漁業が、月数回しか漁に
 出られず、魚種も限定されているためである。そのため、流通・販売段階の
 市場やスーパー等の量販店にとっても取り扱いにくいものになってしまって
 いる。

  また、底引き網などの方法では、狙った魚だけを漁獲することは不可能で
 あり、出荷制限が解除された魚種以外は捨てている状況にある。
 これは生産者である漁師の生きがいを奪うようなものである。

  試験操業は文字通り「試験的」な段階であり、安全性を確保しながら、
 魚種の拡大をし、本格的な操業再開を目指す必要がある。

    汚染水漏洩問題による風評
  福島第一原発の汚染水漏洩問題が、試験操業に大きな影響を与えている。
 試験操業はこれまでの調査に基づき、安全な海域や魚種に限って行われ、
 検査をした上で流通しているが、汚染水漏洩が報道されるたびに風評による
 影響を受けた。漁業者の操業意欲の減退が問題となる。

  放射能汚染の風評被害対策もふくめ、食品の安心の確保には消費者と生産
 者の直接的なコミュニケーションがより活発になる必要があるのではないか。

   先生からの講義の後、会場から、現在の福島県での水産物の地産地消の
 状況について質問がありました。

  濱田先生からは、まだ、浜通りでの地産地消は極めて限定的であるという現状が
 紹介されました。その理由として、元々の海産物の流通経路が複雑であること、
 漁獲量が少なく不安定であることが挙げられ、生産・流通・小売りの各段階で課題を
 抱えているという回答をいただきました。




















 来週は福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの小松先生が講義されます。
 テーマは「福島県県北地域の農業経営と農業復興」です。

 どうぞお気軽にお越し下さい。





2014年6月11日水曜日

福島大学で第6回公開講座が開催されました

「ふくしま未来食・農教育プログラム一般公開講座」の
6回目として「地域林業の原発被災と復興課題」と題して、
山形大学の早尻先生に講義をしていただきました。




















講座ダイジェスト】------------------------------------

  森林は、木材を生産する林業や木材を使った製造業などに
 とっての貴重な資源であると同時に、水を蓄えたり土砂崩れ
 を防いだりする公益的機能を持っている。

  その森林の管理に大きな役割を果たしているのが、国・県・
 市町村などの行政と森林組合という協同組合である。

  行政は、森林除染を進めているが、その範囲は狭い。
  また森林整備も進めているが、作業員の不足などからなか
 なか進んでいない。また、森林への放射性物質の「封じ込め」
 と、森林整備による森林からの放射性物質の「持ち出し」の
 間で矛盾が起きている。また、震災以前から国から県や市町
 村への分権化が進んでいたが、市町村側での人材育成がうまく
 進まず、森林以外も含めた復興への取り組みが多忙を極めるな
 か、森林への対応が遅れがちになってしまっている。

  森林組合は山林の所有者による協同組合で、森林の整備や
 木材の生産・販売、丸太からの製材などを行ってきた。
  震災後も、森林の整備や管理などに重要な役割を果たして
 きたが、その経営は、本業である木材生産やしいたけ原木の
 出荷の停滞が続いている。そのため、除染作業の請負や賠償
 金により、黒字が保たれている地域も多い。


  森林の持つ公益的機能を保つためにも、行政と森林組合を
 うまく機能させ、森林整備を続けていく必要がある。
 それは山村コミュニティを維持していく上でも重要である。

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  震災後の森林組合の現状やどのような計画で森林除染が
 行われているのか。国・県・市町村はそれぞれどのように
 動いているか、知ることができました。
  普段、あまり触れることのないお話ですが、これからも
 福島で暮らしていくのであれば、見逃すことができない重
 要なテーマであると感じました。



















 今まで農業・林業と来ましたが、来週は漁業のお話です。
 少しでも興味のある方、お気軽に是非お越しください。





2014年5月23日金曜日

郡山公開講座2014のお知らせ

前年に引き続き、郡山市役所で公開講座を開催いたします。
1年間を通して6回開催します。

詳しい日程は下記のチラシ(前半)をご覧下さい!



2014年5月2日金曜日

福島大学公開講座2014のお知らせ

昨年度に引き続き、福島大学で食と農に関する公開講座を開催いたします。

毎週火曜日の午後6時から、福島大学L棟で行われます。
(初回のみ木曜日の開催となります)

福島大学の先生はもちろんのこと、学外の研究者をお呼びした講義もございます。
最新の研究成果を踏まえた講義内容になっております。

どなたでも参加OKです。
是非、お越しください。

詳細は下記のチラシをご覧下さい。